#02-ハンガーノック フォンターナ~ヴィクターヴィル

本日二日目の朝。
昨日初日に100km越えしたのに、特に体の異常は無い。

出発しようとすると、インド人店主が声を掛けてきた。
「日本は今大変だな、でもUSAもヨーロッパもアジアもアフリカも協力しているから大丈夫だよ」
と。
涙を流していた。
「良い旅を」
一泊だけだったが、やさしい夫婦に出会えて良かった。


正直、サンタモニカでもそうだったが震災について聞いてくる人は誰一人としていなかった。
僕自身もどうせ他国の事だから、どうとも思ってないだろうと思ってた。
とてもうれしかった。

宿を出発し今日は山岳地帯をぬけなければならない。
その前に朝飯。


もう正直飽きました。
しかもあまりおいしくない。
もっとほかにも中華や肉や寿司や色々選択肢はあるのだが、
自転車に30kg以上の荷物を積んでるといちいち荷物をばらすのが面倒で、
積んだまま買えて積んだまま食べれて積んだまま盗まれないか見張りも出来るところになってしまう。
店の外には朝からこういう謎の人がいるので。


やっぱ日本食が世界一ともうすでに思っています。
そして店を出て自転車に乗ろうとすると、話しかけてくる人の声が。
「そんな荷物で何処に行くんだ」
「ヴィクターヴィル」
「そうか、大変だな、何が入ってるんだ」
「キャンプ道具」
「そうか、グッドトリップをな」
「ありがとう」

フレンドリーに話しかけてくれるのが、孤独な旅を支えてもらっている。
そしていざ出発。
最初の方は平らな道だったが、徐々に坂道になっていく。


景色も段々変わってくる。


結構しんどい。

やっと下り。

こんな事を三度ぐらい繰り返しました。
そして原始的に地図とコンパスを頼りにルートを確かめるが何かがおかしい。

近くの空き地で飯を食べていた警察に道を聞くがめっちゃアバウト。
あっちとかこっちとかそんなレベル。腹減ってたからしょうがないのか。
違う人に聞き、ルート66に乗る方法を教えてもらった。
しかし微妙な上り坂が多分20km以上続いている。


暑いし水を飲んでも飲んでも喉が渇く。
そして迷いながらもやっとルート66、発見。

更に更に上っていき、デボアという街と言うか村に到着。

3リットル買った水も底をつき、100m登ったら休憩100m登ったら休憩を繰り返しやっと
ストアに到着。

そこにいたハリソン・フォード似のサム。
とケン(ケンというのは僕の事で、今までしばしば名前を聞かれるが僕の名前のTsubasaはトゥバザとか
トゥーバ?とか発音しにくいらしいので、勝手にケンという名前に改名しました)


コーラを一気飲みして回復。今度は下り坂で楽勝だった。

コーラを飲み快調に進んでいた、が、また登りになり今思うとこの辺りから体がおかしくなり始めていた。



休憩しても、休憩してもなんか体に力が入らなくなってきている。
運良く川があったので、30分ほど足をつける。

そして、ここでルート66が途切れるので高速に乗らなければいけなくなる。
(通常日本と同じでアメリカも高速に自転車は入れないが、ここからの少しの区間だけは一般道が無い為許可されている)
体に力が入らず、高速を乗り切れるか心配だったが周りには店も日陰も何も無かった。
早く乗ってすぐ降りようと思っていた。
アメリカという国は一般道でも飛ばしまくり、100kmは普通に出ている。
高速ともなるとでっかいトラック150kmは出している。
そんな中走り始めた。
最初はスムーズに進んでいったが、とにかく風圧と音で体が揺れる。
そして地面にはタイヤがバーストした残骸やでかい石、そしてこの暑さで焼けたタイヤのゴムの匂い。
高速に乗りすぐに出口があったがまさかこんな距離でと思いスルー。
これが最悪な判断となってしまった。
進んでも進んでも出口がやってこない。
次の出口まで何マイルかもわからない。
そして体の方もとうとうおかしくなった。
平坦な道だが10mも漕ぐと息が上がり進めなくなっていた。
5分休みは10m進んで何とかちょっとずつ進もうと思っていたが
今度は手足が痺れてきてなんか眠気もある。
水も飲みきってしまった。
次のカーブまで進めば出口が見えるだろうとまた10mずつ10mずつ進んだが、
カーブにさしかかっても出口らしきものは見えず、永遠と車の列と山とアスファルトしか見えてこなかった。
ひっきりなしに飛ばしてくる車と邪魔だと鳴らすホーン、そしてゴムの焼けた匂いとからからの喉。
そしてこの炎天下。
もう進むのは無理だと思い、高速の脇に座り込んだ。
まったく回復しない。
もう誰かがこの高速で止まってくれるのを待つしかないと思った。
警察でも何でもいいから、誰か。。。。
突然激しいクラクションが鳴った。
何か事故かなと思ったが、遠く300mぐらい向こうで一台の白いトラックが沿道に
ハザードをたいて止まっているのが見えた。
何かなとうつろうつろ見ていると、段々そのトラックが大きくなってくる。
飛ばした車が次々とトラックに向けクラクションを鳴らす。
しかしそのトラックは僕の方にバッグで近寄ってきた。
「大丈夫か?」
「水もないし、体がまったく動かない」
「わかった、その自転車俺の車に乗せろ」
助かった。
下手すれば彼も俺ごと危ない目に遭う。
それを高速なのにバックして助けてくれた。
日本ではありえないだろう。
本当に助かった。
その後次の高速の出口で降り、彼とハンバーガーショップに行きコーラを一気飲みした。
ここのハンバーガーはカリフォルニアでナンバーワンだから食べろと言われたが
まったく食欲が無いので遠慮した。
彼は別れ間際に名詞をくれた。
彼はincycleという自転車屋のメカニック。
俺の自転車を見てとっさにブレーキを踏んでくれたのか。
本当にありがとう!ラウル!

ハンガーノック。
言葉だけは知っていたがまさか自分がなるなんて。
本当に車のガソリン切れのように体に力が入らなくなり、まったく進めない。
そういえば水分だけは取っていたが、朝以降何も食べていなかった。
実際経験しないと反省しない。
本当に自分はバカだなと思ったが、この件を反省しまだまだ先は長いので今回の件を活かしていきたい。
長い一日がやっと終わった。

走行距離 76km
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by squarebowl
| 2011-07-04 13:51
| カリフォルニア